五島美術館茶の友会春季茶会記
松親会 松田壯吾
 

 平成23年2月19日、20日両日、東京美術倶楽部にての五島美術館「茶の友会」春季茶会の薄茶席は鎮信流御宗家が席主となられました。
 平戸を舞台に端を発した日蘭通商が、一昨年400周年の節目にあたり、五島美術館にて松浦史料博物館の御品が展示され、鎮信流が記念茶会をさせていただいたご縁からかと思います。
 五島美術館は東急電鉄の五島慶太翁が蒐集された日本と東洋の古美術品を収蔵している我が国屈指の美術館で世田谷区野毛の五島邸に隣接しています。同美術館には趣のある茶室がありますが、現在改築中ということで、今回東京美術倶楽部の茶室を拝借したとのことです。同美術館茶の友会会員は現在1500名であり、入会希望者が目白押しのようです。
 19日、20日の両日、各310名ずつ計620名の方が入席されました。薄茶席は19日6席、20日6席として、1席50有余名の方が入られ、茶道鎮信流をご認識いただき、春まだ浅い一日を楽しんでいただきました。
 

 美術倶楽部2階の「花の間」の床は脇床を含めて4間あり、床の中央には流祖鎮信公御筆による徒然草百八拾九段の横物の御軸が掛けられ、鎮信公の御著された茶湯由来記「文武は武家の二道にして、茶湯は文武両道の内の風流なり」とされる「文」を確と顕しています。
  脇床には法印鎮信公御所持の馬具が飾られています。法印鎮信公は流祖鎮信公の御祖父上にあたられ武勇の名声を恣にされた藩主であられ、脇床の鞍は文武の「武」を現しめています。
 

 今回は全十二席とも松親会の男性が点前を致すことになり、私は2日目の午後の第一席の点前、第三席の半東を仰せつかり、途上、和服姿の婦人を見るやあの人も美術倶楽部に行かれるのかと思いながら曇天の閑散とした休日のビジネス街を足早に会場に入りました。
 早めに茶の友会が用意された点心をいただくこととし、美味しいと召し上がる先輩の声を聞きながら、珍しく緊張感からか食慾はなく、点心の中華弁当を少しだけつまみ、水屋に向かいました。
 今日の水指は口が狭いので合を水平に入れるのが良いとの注意を受け、水指を見ると凛とした平戸藩窯三河内焼獅子鳳凰龍染付でした。私ごとき者が手にするには恐れ多いお道具の数々でしたが、有難く使わせていただきました。

  半東役のとき、拝見後に末席に坐られた上品なご婦人より、「主人の父は平戸出身者ですが、鎮信流はよく存じませんでした。今日は素晴らしい日でした」と声を掛けられたときに、今回の茶会は入席された五島美術館茶の友会の方々、及び鎮信流松親会門人にとっても記憶に残る茶会であったとの思いを強くいたしました。