慈光院御献茶式 |
「慈光院御献茶式に参加して」 |
松洽会 浜谷静枝 |
10月14日、25年振りに奈良に降り立ちました。 いにしえの奈良の都の佇まいは、1300年経とうと2000年経とうと変わらないのだという安らぎを覚えました。 この度の奈良訪問は、15日(日)慈光院本堂で催される「開山玉舟和尚毎歳碑忌並びに流祖片桐石州侯三百五十周年忌法要」で武家茶道鎮信流13代ご宗家様が御献茶をなさる ということでありました。 ご宗家様、奥方様、収様、それに東京支部9名・西各支部9名が参加致しました。 慈光院は、片桐石州候を開基とし「茶室書院」は重要文化財に、「庭園」は、名勝史跡に指定されており、その心澄む感覚、静かな佇まいは、25年前と少しも変わっておらず、これが慈光院の心だと納得し、往時を懐かしく思い起こしました。 |
15日は、心配されたお天気も穏やかな秋陽に恵まれた一日に変わりました。 太鼓・鐘の音を合図に厳かな読経と共にご宗家様の御献茶が始まりました。本堂は勿論廊下まで参拝の方で満席でしたが、静粛・厳粛な雰囲気は水屋に控え居る私共まで伝わって参りました。 |
終了後、参拝の方々は夫々拝礼され、菊の御紋の入った台子や伝来の皆具を眺めていられる姿から、よい法要であったと感じ入りました。 袈裟姿の方々からも〝このような格調高く心のこもった御献茶は初めてです〟とのお言葉を頂き、常日頃ご宗家様が「茶道の精神は心を以て心を伝える」とおっしゃられておられる事の表われだと、思い知らされました。 〝礼〟と〝和〟しっかり心に刻みたいと思いました。 濃茶席は、古石州流(本庄扇宗先生)、薄茶席は石州流伊佐派(磯野宗明先生)のお席でした。 鎮信公の師である片桐石州候は、大徳寺玉舟禅師に参禅し大悟された方で、茶道の本質を明らかにすると同時に、将軍家師範という立場から格調高いものをあみだしたと云われます。 鎮信公は石州流を基に石州流鎮信派を興され、それが武家茶道鎮信流となっています。 石州流各派は「同系」であると勝手に思い込んでおりましたので、初めて拝見したお流儀の点前の、余りの違いに驚きましたが、逆に各流派のお点前に茶道文化の広がりを感じました。 皆様誇りをもってその精神を学び受け継いておられる姿を素晴らしく思いました。お茶をもって心から客をもてなす茶の心を、茶道文化を、これからも末永く守り続けていただきたいと思いました。 又、点心は、慈光院で栽培された野菜を主にした精進の品々を頂きました その後、台子等の片付けを致しました 梱包致し、又長時間の運搬は大変なことと思いつつ、皆さんの協力によって心に残る献茶式ができましたこと、嬉しく思いました 夕食会はお献茶式のご慰労の会を兼ね、イタリアンとなりました。 ご宗家様のご慰労のご挨拶を頂き、乾杯‼ 少々ハードなスケジュールで皆様お疲れ気味でしたが、和やかに楽しく美味しく頂き、癒しの時となりました。 石州候350周年忌法要・御献茶式に参列させていただくという機会を与えていただきましたこと、感謝申し上げます。無事に終えることが出来ましたのも、皆様の心からのご協力の賜物です。本当に有難うございます。 翌日は、有志で修学旅行以来の奈良観光を、楽しんで参りました。 最後になりましたが、ご宗家様奥方様にお礼を申し上げます。 次々とご休息の間もなく、お気遣いご配慮を頂くばかりでした。 お疲れが蓄積されるのではと心配致しております。 くれぐれもご自愛下さいますよう心よりお祈り申し上げます。 慈光院 南方庵入口の色紙 「桐一葉 落ちて天下の 秋を知る」 格・舟 自然がいっぱいの奈良でございました。 |
「片桐石州三百五十年忌に参加して」 |
長崎支部 中村雅子 |
大和小泉の北の町はずれに建つ慈光院、三百五十年の昔、石州公が父貞隆公の菩提寺として境内全体が一つの茶室になるよう造られており、深山に分け入ったかの風情でした。 令和五年十月十五日、お天気にも恵まれ五十年に一度の法要が御宗家様の御献茶と共に執り行われました。 昨年十一月突然夫を亡くし月々の法要の度に「大いなる所で祈りたい」と言う思いにかられておりましたので、支部長宅で、石州公の法要の話をお聞き致し、その場で手を上げ参加を決めました。 五十年前、鎭信流茶道を勧めてくれたのも亡き夫でした。子育て、仕事、そして夫の介護と日々の暮らしに追われながらもお茶の稽古は唯一心安らぐひと時でした。 しかし夫を亡くしてからは、しみじみと形あるものは無くなる事に、身を以て気付かされました。 献茶席で般若心経を耳にした時スーッと心安らぎました。 真の台子、真の点前に心救われ、お茶が自分の中にある事に気づきました。 濃茶席、薄茶席と参加させて頂き、後片付けが終わるまで待合におりました折、御老師がおいでになり書院の見事な大刈り込みの説明をして下さいました。 「天、地、大宇宙と一体となり、茶席に入るのですよ」と、いたる所で感動と幸福感を味わいました。 最後に御宗家様に皆様方とご挨拶に上がります時、方丈横の太鼓橋を渡った先に大きな 広口の弓野焼の壺に野の花が入れられていました。 老い松に 添いにしあらば 侂の道 帰途 御宗家様、奥方様、収様とお別れし奈良観光へ出かけました。 法隆寺、中宮寺、薬師寺、唐招提寺と、まるで修学旅行のような気分で、改めて仏様に手を合わせる一日でした。 |