令和4年度松洽会総会 | |
平戸支部 松華会 森 三佐子 |
令和4年度総会・関連行事が恙無く挙行できましたことに、心より感謝申し上げます。 御宗家様、奥方様、若様の御三方ご臨席の総会となり、集う喜び、語る楽しさに溢れた皆様の笑顔に感無量でございました。「皆が無事に集えたことへの感謝と一層の疫病の収束」を祈願なさいましての御宗家様の御献茶式は、厳粛な中に明るい兆しと希望に満ちたものでございました。平戸支部では、総会初参加の会員も多く、ご迷惑をおかけいたしますことが多々ございましたにも関わらず、労いや励ましのお言葉をかけていただき、会員一同、有り難く恐縮いたしております。 コロナ禍のため二回の延期を経ての開催でございましたが、振り返れば、この二年間は貴重な必然の期間であったと痛感いたしております。 ご猶予くださいました御宗家様、松洽会会長、事務局のご温情、ご参集の皆様に感謝申し上げます。 [総会](髙橋千東 長嶋美智 小畑和子) 総会は、旗松亭桜の間で行われました。 初めに、御宗家様のご挨拶がございました。コロナ禍のため、延期になっていた総会が出来ることへの喜びのお気持ちが強く感じられたご挨拶でございました。 定例の議題に入りまして、新しく松洽会会長に就任されました濵谷靜枝会長のご挨拶では、久しぶりの総会が実りある総会になり、これからの行事や皆様の活躍のエネルギーにしてもらいたいとの熱いお気持ちと、世界の平和と平穏を願う思いを強く感じました。事務局より令和3年度の行事・会計、令和4年度の行事予定・予算案等の報告があり、また、平成15年発行の「点茶要覧」が改訂され、教師免許取得者を対象に希望者に配布という連絡もございました。 皆様方の久しぶりの再会を喜んでいらっしゃるお姿に、総会がスタートできましたことを嬉しく思いました。 [懇談会](森 三佐子・大浦 志保) 「鎮信流の守成~つなぐ思い~」を主題といたしまして、御宗家様、須藤資隆様(旧茶堂須藤家現当主)、朏由典様(郷土史家)、岡山芳治様(松浦史料博物館長)のお話を伺いました。 御宗家様の『茶の湯由来記』を基とするとのお言葉や、茶によって人間性を磨き、高めるために、常の稽古を真の心で臨み、人や物事に丁寧に誠実に接するようにとのお諭しを有り難く拝聴致しました。小さな積み重ねを続けながら、道を拓いていく日々であるよう心がけて過ごしたく存じます。 須藤様は、平戸松浦藩の治世の魅力と特質を、天祥鎮信公から心月公、当代の御宗家様に貫かれる高い精神性と人格の継承、茶道が藩内の治世の要であったことを核にお話しくださいました。 朏様は、久家家(茶頭の一家)の系譜についてご説明いただき、御流儀を支えてこられた茶頭の方々の功績への理解を深めることができました。 岡山様は、松浦史料博物館と鎮信流の関わりの深さと強さ、博物館の展示を茶会や茶道体験につなげようとの呼吸する博物館としての未来の展開をお話しくださいました。 平戸の総会では、御宗家様のお話と、御流儀縁の方々との懇談をとの平戸支部の希望をお聞き入れいただき、ありがとう存じます。「大本となるもの、古いものを理解し手を離さない、しかし、それを振り回さない、逆らわず、筋を守っていく」ことを念頭に、天祥鎮信公の生誕400年の今年、守成を貫かれた方々の延長に私達が在ることの意義と果たすべき責任を自覚して、誠実に生きていこうと思ったことでございました。 [懇親会](西澤 温子) 本館・牡丹の間に会場を移し、明るい司会者の声で懇親会が始まりました。円卓の席名は、『百菓之図』より、雅なお菓子の銘を表示いたしました。総会開催地決定当初、平戸らしいもので、心のこもったおもてなしをしましょうと熱く話し合っておりましたが、コロナの影響で中止が重なり意気消沈の日々でした。やっと開催が決まり、例年とほぼ変わらない参加者で、大変喜ばしい成果となりました。 お料理は、平目、鮑、団扇海老などの海産物、椎茸、トマト、アスパラガスなどの農産物、新鮮な平戸の食材で取り計らっていただきました。皆様もしばらくぶりの再会で、笑顔あふれるお話があちらこちらで繰り広げられ、時間の経つのを忘れる程でした。宴たけなわとなり、恒例の支部紹介では大勢参加の支部は賑やかに、少人数の支部は真心を込められた紹介で、拝見していまして、平戸までいらしたのだと、しみじみ喜びを実感いたしました。 お料理と共に、対面での会話を存分に味わっていただけた時間であったと存じます。 お披きの時、それぞれ挨拶を交わし名残を惜しむ雰囲気の中、ホッとして全員でお見送りいたしました。 [御献茶式(社殿)](久保川 幸子) 翌5日、夜来の雨が降りしきる中、御宗家様の御献茶式が執り行われました。神聖な社殿の中、太鼓の響きで神事が始まりました。宮司の祝詞を拝聴し、御宗家様の御献茶が厳かに始まりました。収様が中立なさいましたお茶を宮司様が神前へとお供えになり、御献茶式は粛々と進められました。 御宗家様の玉串奉奠に収様の先導による松浦家ご一族のご拝礼の後、濵谷松洽会会長の玉串奉奠に合わせて会員一同拝礼いたしました。 再び、太鼓の音が鳴り響くと、張り詰めた緊張感も和らぎ、御献茶式は無事に終了いたしました。静寂の中、境内には恵みの慈雨の雨音に清らかな風が吹き抜けておりました。 今回の総会は、特別なものでした。平戸支部会員、少人数ではございますが、各々の役割を越え準備を進めてまいりました。当日は、下関支部の皆様にも早朝よりお手伝いいただき、ありがとうございました。心より御礼申し上げます。 [御献茶式(社務所)](大原 律男) 社殿に入る人数に限りがありましたので、御宗家様と亀岡神社のご配慮により社務所広間での参列を叶えることができました。大型スクリーン、並びに、プロジェクター等の機材もお借りすることができました。 正面に大型スクリーンを置き、これを拝見する形で参加の皆様全員がお座りになられるように机と椅子を配置いたしました。社殿での御献茶式の様子は、ビデオカメラで撮影したものをZoomを活用したライブ配信で大型スクリーンに投影いたしました。御献茶式開始の合図となる大太鼓の音が社務所広間まで響き渡る臨場感の中、社殿でご参列の方々と一体となった御献茶式が執り行われ、一同身が引き締まる思いでございました。 なお、今回はZoomを活用した初めての試みではございましたが、オンラインお稽古で使用されております通信機材、通信方法などを活用して実施することができました。 [点 心](髙橋 千東・小川 千春) 御献茶式の後、亀岡神社の社務所にて皆様に点心を差し上げました。社務所に参加者の皆様全員が入室できませんでしたので、三組に分かれてお入りいただきました。 点心は、「平戸の野遊び弁当」の趣向で平戸の食材を使ったお料理(磯かつ)でした。平戸特産のスボ蒲鉾や揚げ蒲鉾(てんぷら)などが使われていました。主菓子は銘が「ミステリーローズ」の紅い薔薇の練り切り(蔦屋)、干菓子は若紫と銘が「風薫る」の琥珀糖(熊屋)で季節に合ったお菓子でした。平戸ミステリーローズは、平戸の武家屋敷や寺社を中心に、開国前から人知れず咲き続ける古い薔薇の総称です。 食事の後には一服のお抹茶を差し上げました。皆様から、お料理、お菓子は綺麗で美味しかったと喜んでいただきまして、平戸支部一同ひと安心いたしました。また、お茶もおいしかったとお言葉を掛けていただき嬉しく存じます。 今回の点心席には、佐世保支部の四名の方にご加勢いただきました。皆さんの気配りのおかげで円滑にお運びができ、心強く思ったことでした。 [松浦史料博物館・展示] 今年、松浦家第29代天祥公生誕400年の節目の年を迎えました。天祥公と親交の深い兵学者山鹿素行について紹介の展示「松浦天祥公鎮信と山鹿素行展」を、松洽会総会開催と会期を合わせて展示いたしておりました。 見所は、「茶道具類」は勿論、天祥公が藩主となり直面なさった日本史の大事件「島原の乱」についての資料、平戸藩の対応と藩政を確立なさった天祥公のご功績の紹介でございます。 山鹿素行は、平戸城築城に当たっては、砂型を使い、研究指導したと言われております。当博物館には、数年前、山鹿家より資料が寄贈されており、その中でも吉田松陰平戸遊学の際に山鹿家に贈られました「萩焼茶碗」は、貴重なものでございます。 松洽会の皆様が、約700名が描かれた「山鹿流備立図」の一人ひとりの表情や山鹿流陣太鼓が描かれた様子に足を止め、見学なさっておられる様子が印象的でございました。 [閑雲亭・呈茶](関 弘子) 松浦史料博物館のおもてなしとして、皆様をお迎えいたしました。 4日は、ほととぎすも鳴き、皆様をお出迎えしているような佳き日でございました。 「風が気持ち良いですね。」 「これは薫風ですね。」 「平戸に来たのはお茶会以来ですよ。」 「久しぶりにカスドースをいただきました。美味しいですね。」 「総会のご準備大変でございましたね。」…… 閑雲亭では、たくさんお声を掛けていただきました。 5日は雨になりましたが、御献茶式を終えられた御宗家様がお出ましになられまして、興味深いお話に、観光客の皆様もご一緒に耳を傾けておられました。 よかとこ平戸へ、また、おいでくださいませ。 |