心 田 庵 の 初 釜
長崎支部 松和会 林 喜久代
 新年おめでとうございます。本年もよろしく御願い申し上げます。
 平成26年1月12日、松和会は心田庵で初釜をいたしました。
 心田庵は延宝年間(1670年代)に唐通事だった何兆晋(がちょうしん)が建てた別荘で、城の古址の麓片淵二丁目に300年以上たった今その姿をとどめています。
 昭和40〜50年代頃は、日本陶磁協会長崎支部も錚々たるメンバーで心田庵の所有者M氏も会員で、辻村鈴先生もお招きをお受けになり「つくばいのそばに梅の木があって、その風情が実にいいの」とお話くださいました。
 いつの日か拝見出来ればと願っておりました。 平成24年、この心田庵をM株式会社が市に寄贈、25年2月に長崎市の史跡に指定され、春秋の一般公開と建物と庭園の貸し出しが文化財課で出来るようになり、幸いに初釜にお借りできました。
 約530坪の半分以上を池泉回遊式庭園が占め、東屋、池(半分は修理中)、母屋(四畳半と二畳の茶室を含む7和室)を茅葺きの屋根が緩やかに柔らかに覆い、奥に瓦葺き居宅や土蔵等があります。
 何兆晋は梅を愛し最初は梅に囲まれた心田庵だったそうですがだんだんと少なくなり折角楽しみにしていたつくばいの辺りに梅はありませんでした。
 四畳半の茶室には心月公の和歌懐紙「いと頗やき梅もや奈岐母志ら那くに胡ゝ呂能花や春乎標多留」がかかり19名を2席にわけお濃茶を井戸脇の茶碗でいただきました。
 点心の後、点てだしで薄茶をいただきました。
 当日はお天気にめぐまれ風情ある茶室と庭園で新春らしい雰囲気で初釜が出来たことを皆さん喜んでくださいました。
 後片づけが終わる頃「お庭の柚子を今朝ちぎって柚子湯を作りましたから」とお世話係の方が出して下さいました。
 心田庵ならではのオ モ テ ナ シ でございました。