鎮信公の御祭茶を終えて
長崎支部松和会 中村雅子
 11月14日、肌寒い雨空の下に出口先生宅で御祭茶式を迎える事になりました。私にとりましては家の都合で数年もの間御祭茶のお点前を見送らせて頂き、今回ようやくお受けできる状況になりました。
人が生きていく中に日々の暮らしがありますが若いころには想像もしていなかった事に老いと共に遭遇致しました。避けようも無くただ受け止め晴れ間を見るまで進んでいくしかありません。
こんな日常の中で一番の心の支えとなってくれたものが私にとりましてはお茶のお稽古でした。
常の服から着物に着替え日常から非日常の清められた秩序ある世界へ。
数時間のお稽古ではありますが何よりのすがすがしい充実した時間でした。
丁度2年前、雷が轟く雨足の激しい晩秋の日に出口先生宅で御宗家様より九通りの内見の儀を賜りました。
あの時は緊張のあまり頭が真っ白になり台子の点前が解らぬ程で今までのお稽古のありようを反省致しました。この時のご宗家様のお言葉の中に「今まではお茶に通じる道を歩んで来られました。今ようやくお茶をする家の玄関の前に立たれたところです。」
あれから我が家の玄関を開け2年が経ちました。認知症の夫も施設に入所し幼き孫の世話も終わり、今は一人歩きです。家族から時間を頂きました。
感謝しながらお茶をする人の家を創りたく思います。
芸術、文化は苦しい時ほど必要性を強く感じます。私の日常を支えて頂いた鎮信流の茶道に慎みおいてお礼の献茶をさせて頂きました。感無量でした。
今後も精進して参りたい所存でございます。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。